先日IRCで会話していたときに知ったことなのだが、 ASRという便利な機能を全く知らないユーザがかなりいるようだ。 ASRはとても便利な機能で、XPを使っているならばぜひとも活用したい機能の一つだ。
本家MSのサイトにもASRの解説があるにはあるのだがあまりにもお粗末で、注意するべきことが全く書かれていない。あれではたとえASRバックアップを行ったとしても復元で失敗すること請け合いだ。そこで、今回はなるべくわかりやすいようにASRの概要と手順を紹介することにした。よくわからないとか、こう書くべきだというご指摘がありましたら是非コメントを投稿してください。わたしの力が及ぶ範囲で応えさせていただきます。
ASRは自動システム復元(Automated System Recovery)機能のことで、 NTBackupの機能の一つである。自動的にシステムを復元するのはXPの「システムの復元機能」があるが、ASRがそれと異なるのは OSが起動しないほどのダメージを受けたときや、ウィルスに感染したときでも復旧できるということだ(バックアップファイルが無事ならば)。 OSと必要なアプリをインストールして自分がよく使う構成までセットアップした直後のASRイメージを作成しておけば、もしトラブルが起きたときでもASR復元操作を行うことですぐに使える状態までシステムを復旧させることができる。 Windowsは長期間使用しているとパフォーマンスが下がってしまうことがあるが ASRでまっさらな状態まで復元できる。そして、この方法では面倒なことこの上ないライセンス認証が必要ないのだ。復元作業も再セットアップに比べればずっと楽な作業である。この機能を使わないというのはかなりもったいない。
では、操作手順だ。まずはバックアップユーティリティーを起動する。スタートボタン→[ファイル名を指定して実行]をクリックして表示されるダイアログボックスに ntbackup と入力して[Enter]キーを押す。すると、下の図1のようなウィザードが開始される。(マシンの設定によっては図2がいきなり開かれるときもあります)
図1の「詳細モードに切り替えて実行する」をクリックすると図2が表示される。
図2の「自動システム回復ウィザード(A)」を選んでASRウィザードを開始する。
ファイルの保存先はシステムパーティション 以外を選ぶこと。
というのもASRは復元するときに、まずシステムパーティションをフォーマットしてからバックアップデータを展開する。つまり、システムパーティションにバックアップデータを保存してしまうと復元作業の初期段階でバックアップデータが消去されてしまうので復元できないのだ。
これ以外は特に注意する点はないのでウィザードの指示に従ってイメージを作成しよう。
ASRのバックアップイメージの作成が終わったら、もう一度NTbackupを起動して「バックアップウィザード(詳細)(B)」を起動してシステムパーティション全体の通常バックアップを作成する*1。もちろんこれも保存先はシステムパーティション以外にしなければならない。ただし、外部メディアに保存できるならばこちらのバックアップイメージは CD-RやDVD-Rなどの外部メディアに保存することもできる。
以上でASRのバックアップ作業は完了である。
続いて復元操作の手順だ。
復元作業には次の3つが必要になる。作業を始める前に足りないものがないかよく確認しよう。
- OSのインストールCD、またはセットアップフロッピーディスク
- バックアップで作成したASR復元用フロッピーディスク
- バックアップで作成したASRバックアップファイル
繰り返しの注意になるがASRバックアップファイルはシステムパーティション以外 に保存されているか確認すること。
ASRはOSが起動できないほどのダメージを受けた状態からも回復できるように作られているので、復元作業はOSのセットアップから分岐させて行うことになる。
まずはOSのインストールCDか、セットアップフロッピーディスクでPCを起動する。
セットアップ画面に[Press F2 to run Automated System Recovery(ASR)] と表示されたら[F2]キーを押してASRフロッピーディスクを挿入する。
あとは画面の指示に従って作業を進めよう。
マシンが再起動したらNTbackupを起動する*2。このとき、図1のウィザードが起動してしまった場合は「詳細モードで実行する」をクリックして図2の詳細モードに切り替える。そして、「復元ウィザード(詳細)(R)」を選択して復元ウィザードを起動する。
復元する項目で通常バックアップ で作成したファイルを選択してチェックを入れて「次へ(N)」ボタンをクリックしよう。最後に[完了]ボタンをクリックすれば復元作業が完了する。
ウィルスに感染して壊滅的なダメージを受けてしまったり、修正パッチやサービスパックを適用したら OSが起動しなくなってしまったことはないだろうか?
そんなときは今までは時間のかかる再セットアップがセオリーだった。(実際Windows2000まではそれしか選択肢がなかった) ASR は再セットアップという煩わしい作業からユーザを解放してくれるとても有用な機能だ。ぜひとも活用してほしい。
以下、補足説明。技術者向けです。
*1. ASRバックアップの次の通常バックアップについて
MSによるとASRで復元されるのはOSのシステムファイルとその関連ファイルだけとなっています。そのほかのデータはASR復元処理の初期のフォーマットで全て消去されます。元の環境を完全に復元するためには ASRバックアップデータと合わせてシステムパーティションの通常バックアップデータが必要になります。この通常バックアップは必須ではないものの強く推奨されているためASRバックアップ操作のひとつとして解説しました。
なお、ASRバックアップデータが古くても通常バックアップデータが最新のものであればそれを適用することで最新の状態を復元できます。
*2. マシンの再起動について
ActiveDirectryを複数のドメインコントローラで構築していてその中のドメインコントローラを、ActiveDirectoryデータベースも含めて復元するときは別の操作手順が必要になります。
Windowsセットアップによる復元完了後の再起動では 「ディレクトリ サービス復元モード」 で再起動してAuthoritativeRestoreを行ってください。
ActiveDirectoryデータベースまでは復元しなくてもいい場合は通常の再起動を行います(マルチマスタレプリケーションにより他のドメインコントローラの情報が自動的にコピーされます)。