増税の是非
前回は「減税は論外である」と述べた。減税を行うことで国が破産してしまうからだ。しかし、国家財政を見ると歳入の半分が借金でまかなわれており、今のままの税率ではいつかは破産してしまうことが予測される。これを解決するために増税をほのめかす政党・政治家がいる。さて、本当に増税で解決できるのだろうか?
結論を先に述べてしまえば、解決には全く繋がらない。むしろ、財政がより緊迫した状況に・・・遠まわしな表現は止めよう。率直に言うと破産に近づくことになる。増税は税収の増加に繋がるのだから、一見すると財政状況の改善に繋がりそうだ。しかし、よく考えていくと現在の日本で増税することは破綻への道のりを歩むことに等しいとわかる。
今、増税が行われると経済はどうなるのだろうか。これを推測するヒントは過去にある。消費税の増税が行われた当時を振り返るのだ。今の不況を招いた原因はいくつかあるが、その中のひとつに消費税の導入およびその増税が上げられる。消費税の導入が行われたのは1989年、税率が5%に引き上げられたのは1997年である。消費税が導入された1989年からGDPの低下が始まっている。急激とはいえないがこれは1989年といえば日本経済の翳りに気付いた国民がまだホンの一部だったからだろう。翌年の1990年には経済の翳りに気付く国民が増えここから経済低迷が一気に加速している。 1993年に細川連立内閣が発足し、それに対する期待から回復の兆しを見せるものの 1997年に消費税率が5%に引き上げられ、ここから「先の見えない不況」へと突入したのだ。
読み取れることは、経済の不安要素が広まっているときに増税すると不況になるということだ。経済不安が高まると、国民は明日には解雇され収入がなくなるかもしれないという意識を持つようになる。そして、解雇されてしまったときのために少しでも貯蓄をしておこうと家計は財布の紐を硬く締めるのだ。このときに増税を行うと、家計は出費を抑えるために一段と財布の紐を硬くする。こうなると消費は大幅に低下する。消費が大幅に低下すると企業にダメージがいく。売り上げが低下したなかで従業員には給与を出さねばならないからだ。利益が少しでもあるならばしぶしぶでも給与を出しているかもしれないが(つまり雇用は維持されている)、利潤を得る見込みが厳しくなるとリストラが行われる。リストラが行われると、他の従業員は「次は自分かもしれない」と考えてさらに財布の紐が硬くなる。リストラされてしまった労働者は当然消費活動は最低限になる。輪をかけて低下した消費は更なる追い討ちを企業に与え、企業はさらに苦しくなるのでまたリストラを実施する。と、悪循環が繰り返されることになる ( 左図 )。この悪循環はなかなか脱出できないために「出口の見えない不況」といわれるのだろう。
現在の日本経済の先行きについて「これから爆進すること間違いなし!数年後には確実に世界第一位の経済大国として世界経済を取り仕切るに決まってる!」などという見地の人間は恐らくはいないだろう。それよりもむしろ、「わたしの会社は大丈夫だろうか?」というような不安を抱えている人のほうが多いと思う。この状況で増税を行おうものなら出口の見えない不況どころか「国の破滅が見える不況」が始まるに違いない。
経済が低迷すれば、所得税や法人税など諸税による歳入は落ち込むことになる。そして、「人として最低限の生活を営むための生活費」を負担しなければならないため、社会保障費は増大する。つまり、ただでさえ足りない収入が減ってその上支出が増えるのである。538兆円という莫大な借金を抱えているにもかかわらずさらに借金を重ねる。ほら、日本の破産はもう目の前だ。
減税だけでなく、増税もまた行うべきではないのだ。
| 固定リンク
« 政策を考察しよう | トップページ | 外国人参政権 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント