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2006/01/14

"Hiring is Obsolete" と Yahoo の経営戦略

1/11, Yahoo は 設立前の Web2.0 企業を買収したと発表した。 これだけでなく、Yahoo は2006年中に2000を超える未設立の個人企業を買収するという。 一見すると、収益も出ていない、ビジネスプランも確定していない ベンチャーを買収することに意義があるのか疑いたくなる。

Yahoo がこのような行動をとった背景には、恐らく Paul Graham氏が指摘したことが 原因のひとつにあると思う。氏は自身のエッセイ "Hiring is Obsolete" の中で次のように 述べている。

Big companies are bad at product development because they're bad at everything. Everything happens slower in big companies than small ones, and product development is something that has to happen fast, because you have to go through a lot of iterations to get something good.
I think the trend of big companies buying startups will only accelerate. One of the biggest remaining obstacles is pride. Most companies, at least unconsciously, feel they ought to be able to develop stuff in house, and that buying startups is to some degree an admission of failure. And so, as people generally do with admissions of failure, they put it off for as long as possible. That makes the acquisition very expensive when it finally happens.
What companies should do is go out and discover startups when they're young, before VCs have puffed them up into something that costs hundreds of millions to acquire. Much of what VCs add, the acquirer doesn't need anyway.
意訳:
大企業は全てが下手だから、製品の開発もダメダメだ。大企業では全ての起こりが遅い。 製品の開発は、いい物を作るためには、何度も試行錯誤しなきゃならないんだから すばやく行わなきゃならないのに。
大企業による新興企業の買収はより盛んになっていくだろう。 しかし、ほとんどの企業は可能ならば自社のスタッフで開発するべきで、 新興企業を買収することは失敗を認めることだと感じている。この見栄が 最大の障害だ。人間が失敗を認めるときと同じく、可能な限り認めようとしない。 このことは、最終的に買収するときの費用をとても高いものにする。
企業がするべきは、外に目を向けてまだ蕾の段階の新興企業を見つけることだ。 出資家が目を付ける前ならば買収に何億円も必要にはならない。 出資家が新興企業にいろいろとくっつけるものは、買収する側は全くいらないのだ。

大企業は動きが遅いから自社で開発する能力がない。 将来性のある商品と開発力に優れた人材を得たいならばベンチャーを買収するしかない。 しかし、出資家が目を付けたベンチャーを買収することはかなり高くつく。 買収費用を低く抑えるためには、まだ花が咲かないうちに買収するしかないのだ。 と指摘しているのだ。

大企業から革新的技術が生まれにくいことは、The Innovator's Dilemma にも書かれていることである。 恐らく、Yahoo はこのことに気付き、Web2.0 という技術革新が進む中でもグローバルインターネット 市場で優位に立ち続けるために今回のような戦略に打って出たのだろう。

わたしもいくつかの「大手」といわれる企業で働いたことがあるが、 この指摘はもっともなことだ。わたしが思うに、大企業が魅力的な製品を開発するには 2つの方法があると思う。ひとつは小さな組織を作って独立させ、そこに人材を集めて 製品を開発させる方法。もうひとつはベンチャーの買収だ。

前者は目的の製品の開発に最適な人材が必ずしも見つからない場合がある。 また、新たに作った組織に資本を割かなければならないが、製品のプロトタイプすら できていない状況で企業のトップや株主を説得するのは難しいかもしれない。 企業内部から反発が出るかもしれない。

後者は、実績が確認された製品と既存の市場、その開発者を同時に手に入れられるという利点がある。 欠点は何十億という費用がかかってしまうことだ。

そして、今回の Yahoo がとった戦略は、恐らく、プロトタイプを評価して買収するというものだろう。 この方法では、ユーザが求めているサービスを推測しなければならないが、 買収にかかる費用は成功したベンチャーを買収する費用の1/10くらいに抑えられる。 そして製品を開発する最適な開発者と最先端の技術を手に入れられる。 ベンチャーにとっても数千万~数億が短い間で得られるのだから、 双方にとっていいことがあるのだ。


Hiring is Obsolete -就職は時代遅れ-

ああ、そうそう。"Hiring is Obsolete" で書かれている趣旨は 大企業がどうやって買収するべきかということじゃないよ。 「若いときに勇気を出して挑戦してみよう」ということを伝えている。 大学生・高校生にぜひとも読んでもらいたいエッセイだ。

中にはお金をためてから挑戦すればいいじゃないかという人もいるけど、 それは嘘だ。家族を持ってそれなりの地位を築いてしまった人が どうしてそれらを犠牲にしてまで新しいことに挑戦できるだろう? 失敗してもダメージが少なくてすむのは若いときだけだ。

え?お金がないって?
確かに工場を建てなければ参加できないような市場もあるけれど、 分野を選べばスタートアップ資金はほとんど必要のない市場もあるんだ。 氏が指摘するように、Webサービスだとかのソフトウェアもそのひとつだ。 これらを作るために必要なのは PC と開発環境、それにネットワーク環境だ。 PC は中古なら3万円くらいで買えるし、ネットワーク環境は月に1万円あれば用意できる。 開発環境は GCC とか Python を選べばタダだ。 食費とかを除けばスタートアップに必要な費用は10万~20万なんだ。

失敗したときのダメージは20歳とか18歳ならほとんどない。 若ければ若いほど少ないと思う。 わたしはこのことに気付くのが遅すぎたから結構な痛手を受けている。 あのときに挑戦しておけばよかったなって後悔している。

失敗しても痛くないなら、挑戦しないことは損なんじゃないかな?

Reference
Hiring is Obsolete ( May 2005, Paul Graham )
Yahoo! Announces Acquisition of Company Before Its Foundation ( Jan 11 2006, Greg Yardley )

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