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2007/04/09

[ 政治 ] Web を使うと「不公平」?

サイバーエージェントは4月6日、AmebaVisionに投稿された東京都知事選の政見放送の動画を削除したことを明らかにした。

 同社は「政見放送は、公職選挙法に基づいて候補者の政見放送をテレビ放映することになっており、その放送回数は各候補者毎に明確に定められております」と理由を説明。今回の削除は特定候補者の政見放送だけが視聴される不公平を是正するための措置だとしている。

( 特定候補者だけが視聴されるのは不公平--AmebaVisionが都知事選の政見放送を削除, CNET Japan, 鳴海淳義, 2007/04/06 )

TV は公平でネットは不公平なの?
ずいぶんと面白いジョークだね。コメントにあるように時間を合わせなければ演説を聞くこともできないメディアが公平とは到底思えない。また、聞けば ( わたしは TV というハードウェアを持っていない ) TV では候補者のうち数人だけに注力されていて、視聴者の目に触れる割合は平等ではなかったというではないか。

ネットにアップロードすることを「不公平」であるとし、TV 放送こそが「公平」だと主張する愚か者はたいていこういう。「ネットは PC とか持ってないと見れないじゃないか」。なるほど確かにそうだ。しかしそれは TV で放送される演説に対しても同じことが言える。TV というハードウェアがなければ視聴できない。PC を不要と判断して所持しない人間がいるように、TV を不要と判断して所持しない人間もまた存在する。

公職選挙法とやらは「TV は誰もが持っている」という前提が必要なようだが、メディアが多様化している現在では、この前提は文句なく間違っている。どのメディアを使ったとしても候補者の演説を視聴できるようにするべきなのだ。

選挙管理委員会の対応、動画配信サービス提供各社の対応どちらも正しいとは言えない。BGM が追加されていたり演説を入れ替えるなど編集が加えられた動画が削除されたのは、政見演説の趣旨 ( 候補者の主張を候補者が考えた通りに有権者に伝える。一切編集を加えてはならない。) からいい対応だったと思う。しかし、公開された動画の中には一切編集が加えられていないものもあった。これまでも削除されてしまったのは残念でならない。

選挙管理委員会は誰でも、いつでも候補者の主張を確認できるように候補者全員の動画をテキストと合せて公式サイトに用意すればよかったのだ。また、動画配信サービス側は「自由に政権演説を確認できるようにするための方法の一つ。ほかの候補者の演説も用意してほしい」と切り返してほしかった。( ただし、前述のように候補者の主張が誤解されないように編集が加えられてしまったものは削除するべきだと思う )

また、わたしはネットにはネットの利点があると思う。まず第一に、見たいと思ったときに好きなだけ目にすることができる。TV 放送は放送時間に合わせなければならないが、ネットならいつでも自分の好きな時間に確認できる。TV 放送もビデオなりレコーダーなりに録画すればそれが可能だが、TV 本体とは別のハードウェアが必要になることが多い。ネットはそんなもの必要ない。そういったサービスは向こう側が提供するものだ。

第二にじっくりと考察できる。TV 放送ではうまく聞き取れなかったとしても、もう一回ということはできない。別の機会を待つしかないが、放送回数も規定されているので周りがうるさかったりして聞き取れなかった場合は残念ながら諦めるしかない。ネットはページをリロードするか「もう一回見る」ボタンをクリックすれば気がすむまで演説を確認できる。主張に矛盾はないのかといったことは勿論、候補者 A と候補者 B は正反対のことを言っているがどちらがいいのだろうという場合も好きなだけ両者の主張を比べることができる。

第三に、ユーザの好きな形式で候補者の主張を確認できる。選挙演説という動画だけでなく、テキストでもプレゼンテーションライクなスライド形式 ( Javascript を駆使すればブラウザでも実現可能 ) でも好きな形式を選べる。しかし TV はそうはいかない。自由にスクロールできない TV で文章を流されても読み取りづらいだけだ。

第四に、コストがそんなにかからない。選挙カーを用意するだとか、マスコミに取り上げてもらうとかだと金銭だけじゃなくて精神的・肉体的なコストも大きい。しかしネットは違う。サイトにファイルをアップロードしておくだけだ。選挙のポータルページに候補者全員のファイルをアップロードしておけば平等というものだ。どれだけ有権者の目に触れるかはユーザが決める。ネットはユーザ主導型のメディアだ。候補者がお偉いさんでどれだけ金を持っていようがユーザが首肯しなければ支持は広がらない ( 批判は広がるかもしれないが )。

それぞれのメディアを利用しているユーザに、それぞれに合った方法で候補者としての主張を伝える行為のどこが悪いのだろうか。情報伝達手段が多様化した今では唯一の正しいメディアなんてものはないのだ。

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