[ ニッキ ] 推定有罪の恐ろしさ
自分はロリコンじゃないし、妻の目も厳しいからエロ画像なんてHDDになんて入れてないよ、とか思ってませんか?
私も、そうです。ロリコンじゃないし、エロ画像も溜め込んでいません。違法アップロードもしてません。
でも、家宅捜索をうけたんです。令状をとられたんです。
これ、人ごとじゃないですよ。ほんと、まじヤバイですって。
( 児童ポルノ法が私に及ぼした実害と、今後増えると予想される家宅捜索令状, seraphyの日記, 2012-05-19 )
やっぱりというか、児ポ法の危険性ってほとんど知られていなかったんだなぁと思いました。
MIAU も児童買春・児童ポルノ禁止法改正についての緊急声明を出して、冤罪の危険性、日本国憲法で保障されている「表現の自由」および「通信の秘密」の不当な侵害の危険性を指摘していたんですけど、一部の人たちの「気に食わないから規制っ」意見で成立しちゃったんですよね。
で、seraphy 氏が書いているようにダウンロード刑罰化はもっと危険。
JASRACのようにその分野の専門家を擁し権力を兼ねた組織を相手に、
無罪であることを自分で証明しなきゃならないのだ。
無罪であることを証明できなければアウト!
その後一生、あなたは前科付の烙印を背負って生きることになるのである。
たとえば、こんなケースを考えてみよう。
ある日、あなたは音楽 CD を買ってきた。
買ってきた音楽を気に入ったあなたは、MP3 に変換して Dropbox を使って同期することにした。
Dropbox を使えば iPhone でも PC でも、iPad でもどれを使っても好きな時に聴けるようになるのだ。
その後、しばらく経って引越ししなければならなくなった。
全部の荷物はもっていけない ( これはよくあることだ ) ので、
どの荷物を持っていくのか取捨選択する必要がある。
「今まで購入した音楽で気に入ったものは全部 Dropbox に入れてある。CD は諦めよう。」
あなたは CD を持っていくことをあきらめることにした。
新しいアパートに引っ越してからしばらくして、突然警察がやってきた。
捜査令状を突きつけられ、部屋の中を片っ端からひっくり返され、PC の中も片っ端から漁られた。
もちろん、iPhone の中もだ。
家宅捜索で次の事実が指摘され、あなたは起訴されることになった。
- CD は所持していない
- 大量の MP3 ファイルが PC と iPhone の中にあった
さて、あなたはこの状態で自分は無罪だと、MP3 ファイルは正規の方法で入手したものだと
裁判官と裁判員に納得させることができるだろうか?(*1)
先に言っておくと、裁判員は専門知識の有無に関係なく選ばれる。
このケースの他にもある。不幸にもマルウェアに感染してしまい(*2)、そのマルウェアが児童ポルノや音楽ファイル、動画ファイルの収集・配布をした場合とかだ。この場合でも自分がマルウェアに感染していたことを知らなかったこと、感染したマルウェアが違法なファイルを収集・配布する動作をすること、マルウェアが関与していないファイルは全て正規の方法で入手したことを証明(*3)した上で裁判官と裁判員を納得させなければならない。できるだろうか?
違法行為は罰せられるべきという点については、わたしも賛同します。
しかし、「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」という原則に反する法案はそもそも成立させるべきではないのです。
改正児ポ法と違法ダウンロード刑罰化はいわば「推定有罪」という考えを前提にしたものです。
推定有罪を元にした法制度がどれほどの悲劇に繋がるかは、魔女狩りのように歴史を振り返ればわかることではないでしょうか。
これらの法律が早期に改正されることを望みます。
(*1) すべての CD の購入証明書を保管していれば無罪判決になるでしょう。が、そんな人が何人いるのでしょうか?
(*2) セキュリティソフトを入れれば全て防げるというのは大きな勘違い。ちなみに、マルウェアが収集した児童ポルノによって起訴されたという事例は海外で発生している。
(*3) サイバー空間における無犯罪証明問題、あるいはデータ同定問題と言われているもの。
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